スポーツ系電動アシスト自転車におけるコンポーネント選定について
スポーツ系電動アシスト自転車に対して「なぜ高価なコンポーネントを採用しないのか」というご質問をいただくことがあります。この点について、合理的な理由をお伝えいたします。
まず、日本国内の電動アシスト自転車は法規によりアシストが作動する上限速度が24km/hに制限されています。そのため、一般的な走行では、常にアシスト範囲内の速度域を走ることが前提となります。つまり、一般的なスポーツバイクのように変速を駆使して高速巡行を目指す設計思想とは異なるという点が重要です。
特にリアハブモーターを採用しているモデルにおいては、アシスト作動中(24km/h以下)において、チェーンやギアに負荷がかかることはありません。これは、モーターが直接ホイールを駆動するため、チェーンを介した駆動力の伝達が不要だからです。そのため、仮に高価なコンポーネントを採用しても、その性能を十分に活かす機会がほとんどないのが実情です。
では、なぜ変速機を搭載しているのか? その理由は、バッテリーが切れた際の自走性能を確保するためです。電動アシストが機能しない状況では、適切なギア選択により軽い負荷で走行できることが求められます。したがって、変速機は「高速巡行のため」ではなく、「万が一の自走時の負担軽減」が主目的となります。
また、スポーツ系電動アシスト自転車は、競技を目的としたものではなく、ラグジュアリーなアクティビティとしての楽しみを提供するものです。無理なく快適に乗れることを前提とし、ただ速く走ることではなく、新たな発見と共感を生み出す体験を提供することが重要な価値となっています。
そして、電動アシスト自転車の性能を決める最も重要な要素は、エレクトリックコンポーネント、すなわちコントローラー、モーター、バッテリーの性能です。これらがどのように制御され、どのような走行フィーリングを生み出すかが、電動アシスト自転車の本質を決定づけます。しかし、スポーツ系自転車は、通常のコンポーネント(変速機やブレーキなど)を重視しがちで、電動アシストのコアとなるエレクトリックコンポーネントに注目されていないのが残念です。本来、電動アシスト自転車の価値は、このエレクトリックコンポーネントの設計や性能に大きく左右されるため、ぜひこちらにご注目いただきたいと考えております。
以上の理由から、当社ではスポーツ系電動アシスト自転車においてコストパフォーマンスを考慮し、合理的なコンポーネント選定を行っております。高価なコンポーネントを搭載することは、性能を活かせないだけでなく、ユーザーにとって不要なコスト負担につながるため、最適なバランスを考慮して設計しています。
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。