安全とデザイン
街を歩いていると、電動アシスト自転車を見かけない日はほとんどありません。
坂道でもすいすい進み、誰でも気軽に遠くまで行ける。とても便利な乗り物です。
けれど、ここに少しだけ不思議な点があります。見た目は自転車なのに、体験は実はそれ以上だということです。
たとえるなら、普段履きのスニーカーだと思って歩き出したら、実は軽い登山靴だったような感覚です。歩けてしまうから気づきにくいのですが、扱い方を知らないと疲れ方も、バランスも、少し違います。
eBikeもそれに似ています。普通の自転車と同じように乗れてしまうからこそ、本来必要な「慣れ」や「理解」を飛び越えてしまうことがあるのです。
以前の自転車には、自然な制限がありました。体力です。遠くへ行ける人、坂を登れる人は限られていました。ところが電動アシストは、その壁をやさしく取り払いました。誰でも景色のいい場所へ行けるようになったのは、とても素敵な変化です。



ただ、その一方で、知らないうちにスピードが出ていたり、下り坂の距離感がつかめなかったりと、戸惑う瞬間も生まれます。ここで起きる不安は、機械の強さの問題ではありません。ほんの少しの理解と慣れが足りないだけなのです。
本当の安全とは、壊れないことだけではありません。「安心して楽しめること」だと思います。
乗り始めの体験、止まり方の感覚、重さの感じ方。それらが自然にわかると、人は緊張を解きます。緊張が解けると、風や景色を楽しむ余裕が生まれます。すると同じ道でも、急に美しく見えてきます。
ここで、もう一つ大切な要素があります。デザインです。
デザインというと形の美しさを思い浮かべますが、本来は少し違います。それは「どんな時間を過ごす乗り物なのか」を伝えるものです。
腕時計が単に時間を知る道具ではなく、その人の暮らし方を感じさせる存在であるように、乗り物もまた、その人の休日や価値観を静かに語ります。どんな場所に似合うのか。どんな人が乗ると自然なのか。それを言葉にせず伝えるのがデザインです。
そして実は、安全性とデザインは離れたものではありません。守られていると感じると、人はリラックスします。リラックスすると、その体験は心地よい記憶になります。心地よい記憶は、美しい印象として残りま
高級ホテルのロビーが美しく感じられるのも、装飾の量だけではなく、安心できる空気があるからでしょう。XTECHが目指しているのは、自転車を販売することだけではありません。速さやスペックの競争でもありません。安心して遊べる、大人のための乗り物をつくること。そして、その時間そのものを楽しめる文化を育てることです。
いま、電動アシスト自転車は便利な道具としては十分に広がりました。けれど、まだ「憧れの乗り物」にはなりきっていません。
信頼だけでは人はときめかず、憧れだけでは長く続きません。安心が信頼をつくり、デザインが憧れをつくります。その二つがそろったとき、はじめて乗り物は文化になります。
これから先、電動アシスト自転車は、移動の道具として選ばれるものと、休日を楽しむために選ばれるものに分かれていくかもしれません。(予測)
もし後者が生まれるとすれば、その入口はきっと性能表ではありません。「安心して楽しめそうだ」と感じることと、少しだけ心が動く美しさから始まるのだと思います。


