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半年で2,000km。東京と大阪を二往復した距離を、オフィスのバイクは静かに走り切った。都内の信号、坂道、荒れた路面。そのすべてを日常の延長として受け止めながら、電動系のトラブルは一度もない。交換が必要なのは、タイヤとブレーキパッドという消耗品だけ。道具としては当たり前のことかもしれないが、その“当たり前”を淡々と積み重ねる姿勢こそ、このブランドの本質を物語っている。

XTECHはファブレスメーカーだ。生産は中国の巨大ファクトリーで行われている。ISO9001を取得した、いわば世界基準の品質管理体制を持つ工場だ。しかし、ただの量産品ではない。エンジニアたちが一台ずつ組み上げる工程には、工業製品でありながら、どこか工芸品のような緊張感がある。合理性という骨格の上に、作り手の矜持が静かに宿る。その佇まいは、機械でありながらアートピースにも似ている。
XTECHは、むやみに数を追わない。電動アシスト自転車は、メーカーごとに性格がある。加速の質、トルクの出方、フレームの剛性感。それらは数値ではなく“乗り味”として現れる。XTECHは、その個性を理解できる人にだけ届けばいいと考えている。誰にでも分かりやすい言葉で声高に語るよりも、乗った瞬間に伝わる感覚を信じているからだ。
XTECHは大人のスポーツバイクというイメージはある。だが、本当は若い世代にも乗ってほしい。分別を持ちながらも、どこかで限界を試してみたいと願う若者たち。彼らの冒険心は、ときにバイクの設計値を超える力を生む。その衝動が、SUB(Sport Utility Bike)という思想の土台になる。挑戦や逸脱を否定しないこと。それもまた、XTECHの姿勢だ。



ただし、高性能や高品質を誇示するだけでは足りない。スペックを並べることは簡単だが、それだけでは“バブルの残像”と揶揄されかねない。雑誌の切り抜きを真似たようなスタイルではなく、自分の時間をどう使うかを知っている人。静かに海へ向かい、山へ入り、街を流す。その背中に無理がない人。Luxury & Sportとは、価格や年齢ではなく、選択の積み重ねから滲み出るものだ。
XTECHは、年配者がただ楽をするための自転車ではない。金額だけで選ばれることも望んでいない。従来の自転車業界の文脈とは少し違う言語で、あえて多くを語らずに提示する。“無言のプレゼンテーション”とは、スペックシートではなく、存在感そのものを差し出すことだ。
人生を楽しみ、余暇を自分の手に取り戻す人。そして、日常の中に小さな冒険を仕込める人。この二つのタイプが、XTECHというバイクを完成させる。所有する理由を説明できることよりも、自分なりの美学を持っていることのほうが大切だ。



XTECHに乗ったからといって、人生が劇的に変わるわけではない。けれど、移動の時間が少しだけ濃くなる。風の匂いに敏感になり、遠回りを選びたくなる。その積み重ねが、やがて“動くサードプレイス”になる。家でも職場でもない、もう一つの居場所。ハンドルを握った瞬間にだけ立ち上がる、静かな自由。
それで十分なのだと思う。


